よろめき食い道楽記

日々見つけたオイシいもんのことを語ります

丸太町十二段家 [烏丸丸太町]

京都の「日頃のええもん」を楽しむ

【2012年7月】
暑い季節になり、夏に旬となる食材のお料理を楽しみにして伺いました。何時もの菜の花(2835円)をお願いいたしました。

○お造り:よこわ、鯛、ウニの盛り合せ。毎度の通り、厚めで味も歯ごたえも楽しめます。
○鴨茄子の揚げ出し:半切りの鴨なす、旨いお出汁に浸されて細い鰹節。甘い万願寺唐辛子、鱧も揚げ浸しになっていて、豪華です。
○だし巻:変わらず美味しいです。
○みそ汁:こちらも毎度変わらず、美味しい生麩の赤出しです。
○お茶漬け:お漬物に胡瓜、水茄子のぬか漬けが入っている夏バージョンです。加えて定番の柴漬け、壬生菜、牛蒡などがありました。いつもの通り、ごはんで二膳、お茶漬けで一膳です。

何時も満たされた気分になるお店で、これからも季節の品をいただきに伺いたいと思います。

*以前のレビュー*
【初訪問:2009年1月】
肌寒い冬の日の夜、ゆったりと食事をしたいと思って伺いました。皆様のレビューを拝見し、そういうシーンにピッタリだと思ったからです。連絡したらかみさんも大賛成、プチ念願が叶いました。
丸太町を烏丸から少し西へ、南側のビルですが玄関は落ち着いた日本風の造り。屋号の書かれた小さな行灯と営業中の木札、予備知識がなければどのようなお店なのか、全く推し量ることも出来ないです。引き戸を開けると作務衣が似合う若い女性が、こちらを見て「いらっしゃいませ」と。抑え気味なれど明るい声で出迎え、良く磨かれた濃い茶色の床に丸いちゃぶ台、これは期待が否応無しに高まります。

折角の床暖房、二人には大きいですが台を使わせていただきます。お茶漬けの入ったセットで一番贅沢な「菜の花」のセット(2835円)をお願いしました。私はお湯割りをお願いしたら、二階堂の麦を大きめの陶器製カップに入れていただきました。「ああ、なみなみ入れていただいてる!」と声を出した時の、別嬪さんの笑顔がまた魅力的。

○お造り:まぐろ(中トロ、赤身)、鯛、貝柱、ウニの盛り合わせ。私の趣味では鯛は「アラ」が一等で、お造り自体にそれほど興味はないのですが、コリッと、そして甘くてとても良かったです。
○蕪蒸し:大きい。他のお店に比べ約二倍ほどあります。なぜならば、海老、百合根、銀杏など、具がまた大きくて盛り沢山。温かく、かつ蕪の爽やかな風味もあって、たっぷり楽しみました。
○だし巻き:アツアツ、トロトロ、しかも厚い!箸を入れるとパッと湯気が立つだし巻きを、口に入れてハフハフ言いながら食べるほろ酔い気分。
○みそ汁:生麩が入っていました!お酒の肴にもなる素晴しい椀です。
○お茶漬け:幾つものお漬けものが盛られた皿、京都の日常の中にある美とは、こういうものなのでしょう。ほうじ茶でお茶漬けに、そのままごはんと楽しんでも良いです。しかし漬け物だけでも味わえる程度の塩加減なので、材料の味がよくわかります。ごぼうとしば漬が特に印象的でした。

大通り沿いなのに非常に静かで、常連さんと思われる他のお客様も非常に落ち着いて居られます。帰る時にも別嬪さんのお見送り、若い方なのにずっと落ち着いた丁寧な応対で安心してサービスを受けることができました。
品数を減らしたよりお手軽なセットもあり、お昼と夜とも同じ内容でいただけるのも使いやすいです。観光向けで飾られていない、京都の「日頃のええもん」をいただきたい時、非常に良い選択と思います。

【2009年7月】
ほぼ半年ぶりに再訪問しました。夏にはどんなものが食べられるか楽しみに伺いましたが、結果は期待以上の食事になりました。
ちょっと二人には大きいですがテーブルを使わせていただき、前回と同じ「菜の花(2835円)」をお願いしました。前回と同じ方に応対いただき早速気分も上々、冷酒(ふじちとせ)を一合お願いしました。粋な酒器で楽しみつつ、お食事を待ちます。

○お造り:鱧おとし、鯛、うにの盛り合わせ。青いガラスの器で夏らしく涼しげに登場。鱧は厚い身で大きめのものが二つ、しっとりした味で少しの梅肉が良い感じでした。鯛はタップリ、5、6切れはありました。甘くてコリッとしています。ウニは少し添えられた感じでしたが、実は半切りスダチの切り口面の上に乗せられておりました。ウニの甘さにごくごくほのかにスッとした柑橘の香りがなんとも爽やか。誰が考えられたのでしょうか。
○鴨茄子の揚げだし:半切りの丸い鴨茄子、ヒタヒタのお出しに入っております。たっぷりの鰹節が乗せられた茄子をいただくと、甘い!皮まで柔らかくなったところを、極力お出しが染み込む様にしていただきました。添えられたししとうがまた肉厚、ジューシーにさえ感じてしまいました。
○みそ汁、だし巻き:前回同様に楽しみました。
○お茶漬け:夏らしく漬け物は茄子、胡瓜の浅漬けが主役で八種類。ごぼうのしょうゆ漬け、本当に細かく刻まれたしば漬、キャベツのショウガ漬なども相変わらず美味しく、流石です。

急ながら別途以下の二つを用意していただきました。
○魚そうめん:京都の夏の味です。そうめん状のかまぼこを極々淡いお出しと一緒に冷たくして出していただけました。穴子も主役を邪魔せず、良いアクセントの感じです。ここでも柑橘(恐らくスダチ)の香りが本当に良い感じで、涼と味のご馳走でした。
○ トマトと胡瓜:朝採りですので、という一見シンプルなサラダでした。ところが今回最も驚いた瞬間。一口大に切られた赤と緑の鮮やかな野菜に、透明のジュレがかかっています。それだけ舐めてみますと塩気が強くて、わずかに甘酸っぱいものでした。が、トマトや胡瓜に付けていただくと、野菜の甘みがぐっと前面に現れました。なんか、手品を見せられた感じです。

ご主人に少しお話を伺いました。「うちは定食屋ですから」と笑いながら謙遜されておりましたが、身近な食材で丁寧に作られた食事を、誠実なお値段でいただけるのが、このお店の一つの魅力だと思います。

【2009年10月】
「名残の鱧づくし その二」
どうしてもこちらで鱧と松茸の土瓶蒸しをいただかないと。そういう思いで暫く、時間が出来た平日の夜にどうかと誘ってみると、かみさんは勿論オーケーとのこと。お店の前で待ち合わせをして伺います。お店に入ると、これまで経験したことが無いくらいの混雑で、空いているちゃぶ台が一つだけでした。すぐに我々は案内されましたが、その後にもお客様が来られて待たれたり時間をずらされたりです。これだけ混雑しても大声を出すテーブルもなく、それぞれのちゃぶ台が賑やかな家庭の居間となっているようです。
「土瓶蒸し」が出来るかお聞きして、確認いただいた後に「お出しできます」とのこと。では「菜の花(2835円)」に「土瓶蒸し(時価:1260円)」、それに冷酒を一合お願いしました。汁物が重なるので、ということで、「菜の花」についている赤だしを一品に換えていただけました。まずはそちらから。

○万願寺唐辛子とじゃこのたきあわせ:おだしのうま味が肉厚の万願寺に染み込んでおり、一品目から唸ってしまいました。
○お造り:鱧おとし、鯛、鮪とろ、塩さばの盛り合わせ。鯖はウニとどちらにするか選べました。こちらの鯛は、本当にいつも良い歯ごたえで甘く美味しいです。塩さばは厚い二切れでスダチを挟んであり、ほんのり柑橘の風味が脂の乗った鯖の身に移っています。お酢を使う〆鯖とは違って柑橘で爽やかに、しかもこってり感が楽しめて抜群でした。
○鱧の鳴戸巻き:鱧の煮物です。皮を内側にして何重にも巻いた鱧の身に甘辛のお出しが入って旨い!付いている小芋、青菜、ずいきも美味しいです。ずいきに柚の風味が入っているので、また小芋と良く合うこと。
○土瓶蒸し:まずは土瓶が大きい。松茸、鱧、銀杏など、それに合わせてたっぷり入っています。猪口におつゆを入れスダチを少し絞り、秋の贅沢を楽しみました。お造りと同じ頃に出していただきましたが、冷めないままごはんの頃までじっくり楽しめました。とても満足、でも次のシーズンまでとなると名残惜しいなあ。
○だし巻き:毎度ありがとうございます。
○漬物:今回は白菜が深めに漬かっていて、発酵の酸味がとても面白くいただけました。ごぼう、キャベツ、胡瓜、壬生菜、しば漬、山椒昆布など、どれをとっても美味しい贅沢な盛り込みです。
ごはんは、おひつの分の三膳分をそのままいただき、一膳おかわりしてほうじ茶でお茶漬けにいたしました。

いつものお運びの別嬪さま、沢山のお客様に一人で応対して頑張っておられました。それでも目配せ忘れず、おかわりをしたいときにはすぐにお願いが通ります。「こういうお店にお客さんがたくさん来ている、というのはいいと思う」とはかみさんの弁、至言だと思います。

【2009年11月】
忙しい毎日がただただ過ぎ去って行く様な日が続くと、本当に落ち着いて食事できるところに伺いたくなります。そういうことで、お気に入りの一軒であるこちらに伺いました。
お店に入り、初回に訪問した時に使ったちゃぶ台を使わせていただき、急に寒くなった時節に有り難い床暖房を楽しみます。
本日の一品をお聞きしたところ、美味しそうだったので定番の「菜の花(2835円)」をお願いします。それに「月の桂 にごり」を一合、これを見かけると、京都も寒い季節だなあ、という感じです。

○お造り:よこわ、鯛、塩さば、うにの盛り合わせ。鯛はいつも甘くて美味しいです。塩さばは先月と同様、スダチを厚い二切れで挟んだ素敵なものでした。今回の驚きはよこわ、最初は何かは解らなかったのは、今まで見たどのよこわと違い、淡桃色だったことです。見た目通りで味も濃厚、よこわのトロって美味しいものだなあと感心しました。
○柿の白和え(別途追加):季節の一品として出していただきました。塩梅というか、なんというか、絶妙です。柿の味が勝つか、味付けに埋もれるか、そのどちらでもないギリギリなところで味わう至福。
○小茄子の味噌(別途追加):甘過ぎない田舎味噌で和えた茄子は、にごり酒の絶好のお供でしょう。
○穴子と蕪のあんかけ:良く煮えた蕪の大きな一切れに厚い身の穴子、それに柚の香るあんがかかった一品。季節感あふれる紅葉の器で、舌も眼も満足。もちろん十分なポーションがあります。
○だし巻き:!
○漬物:今回は千枚漬け、ごぼう、胡瓜、壬生菜、しば漬など。これだけでもお持ち帰りしたい感じです。
ごはんは、おひつの分を二膳をそのまま、一膳とかみさんから貰った一膳をお茶漬けにいたしました。
前回程でないですが、それでもお腹いっぱいです。

今日はご主人だけでなく、奥様もお見送りいただきました。美味しい食事をいただいた上に丁寧に謝していただき恐縮です。この店に来る度に名言を出すかみさん。
「(注:穴子と蕪のことで)似たものは食べれたとしても、こういう料理は絶対に京都でしか食べれない」
なるほど、京野菜などがいくらブームになっても、京都の料理人、愛する客が今も育て続けている伝統は、一朝一夕に真似は出来ない、ということでしょうか。参りました。

【2010年7月】
身内が京都に来るというので、是非にと思っていたこちらに連れてきました。といいつつ、結構久しぶりの訪問になっております。いつもの通り「菜の花(2835円)」をお願いしましたが、夏だからそろそろと思っていたとおりの内容で、相変わらず素晴らしいです。

○お造り:夏らしい青いガラス器で出していただきました。よこわ、鯛、鱧の盛り合わせです。鯛も毎度のとおり甘く、よこわも特に今日は大きめのブツでした。鱧は基本的におとしですが、皮目に炙りが入っていた様で香ばしく仕上がっています。梅の香りがするトッピングが面白かったです。
○鴨茄子の揚げ出し:大きな鴨なすがたっぷり。削り鰹の風味もよろしく、美味しくいただきました。添えた海老も大きく、万願寺とうがらしの甘さも夏を感じます。
○だしまき:毎度美味くいただきます。
○漬物:夏らしく胡瓜、茄子がありました。珍しいものとして長芋の漬物がありました。大根のピリ辛も程よい辛さを発酵のうまみが包む感じで上品に仕上がっています。定番のしば漬なども相変わらず素晴らしい。ウカウかしているとお茶漬を忘れてごはんだけで食べきってしまいます。
○ごはん、生麩の赤出しはいつものとおりです。

雨の日だったので、「お足元悪いところようこそおいでいただきました」と深く謝していただきました。初めてお会いする若い男性スタッフでしたが、物腰が柔らかく、お酒から食事に切り替わるタイミングを見て汁物を温かい状態で出していただけるなど、しっかりと応対いただけました。こちらに伺うと、シンプルで身体に良い、しかし贅沢な食事をいただいた感じになります。

【2010年11月】
遅くに伺ったので、おだしが完全に無くなって季節の一品が用意できないとのこと。替わりにお刺身を一品として水菜(1890円)を提供していただきました。千枚漬けの季節です。

【2011年1月】
冬の寒い日に美味しいものをいただいて心身共に温かくなろう、ということでこちらに伺いました。床暖房が心地よいちゃぶ台に座って、本日の一品を確認しました。昨年の夏頃から見かける丁寧な物腰の男性スタッフの返事を聞くと期待通りで納得、いつもの「菜の花(2835円)」、それからこのシーズンならではの「月の桂にごり」をいただきます。

○お造り:お正月らしく、祝い事用の鶴の器で。よこわ、鯛、それに羽子板を模して切った大根の上に海胆です。こちらのお造り、本当にいつも美味しくいただきます。誘われるままに私の猪口を一嘗めしたかみさんが、「旨い」とひと言。
○かぶら蒸し:こちらの冬の愉しみといって過言ではありません。大きな丸い蒸し物に優しいあんかけ、薬味におろし山葵。具も二種類の魚(恐らく鰆と穴子)と百合根もたっぷり。冷たいにごり酒と唸りながら交互にいただきました。 ○だしまき:本当に美味しいです。
○漬物:千枚漬、すぐきが季節を感じます。それから名物のしば漬、細かく刻んで味自体が違ってくる、そこまで計算されているのが京都の漬物、とはかみさんの弁。あっさりと上品なお味の菜の花漬も入っていました。寒い日の日暮れ時ですが、少し春の気分を味わいます。ごはんを二杯、お茶漬けで一杯をいただきました。
○ごはん、生麩の赤出しです。

ここ数度は若い男性スタッフが応対しておられます。所作が落ちついているし立派だなと感心して、毎度の美味しい食事を謝したのでした。

【2011年7月】
夏になって美味しい野菜が出てきたころ、久しぶりに伺いました。毎度の通り平日の夜に伺いましたが、待っておられる方が居るぐらいの人気でした。上階にもお客様が居られたようですが、それでも問題なく応対されるお店の方は流石。若い人も多いですが、変わらずきっちりされています。いつもの「菜の花(2835円)」、それから冷酒を一合いただきます。

○お造り:夏らしい涼しげな青いガラスの器で。よこわ、鯛、それに酢橘の上に海胆です。今回は特によこわが良くて、赤身から中トロの部分までそれぞれ違った味を楽しみました。
○鴨茄子の揚げだし:こちらの夏の一品。ヒタヒタのおだしにトロトロの茄子です。肉厚の万願寺も毎度ながら好ましい。実は季節の鱧はこちらに揚げ物で添えられていて、これも嬉しいものでした。
○だしまき:毎度変わらず美味しいです。
○漬物:この季節の主役は胡瓜、茄子の浅漬けです。それから細かく刻まれたしば漬、ごぼうの醤油漬、壬生菜も定番ながら美味しいです。最近は、漬物でごはんを二杯、お茶漬けで一杯がお決まりです。
○ごはん、生麩の赤出しです。

実はかみさん、こちらの器とお料理の盛りつけを見るのも楽しみにしている様です。やはりこちらのお店、日常のお食事の最上級版、という思いは揺ぎないです。

【2011年9月】
日中は汗ばむけれど中秋の月が美しい日に伺いました。平日ですがほぼ満席で、少し待ってから案内されました。一品をお聞きして、いつもの「菜の花(2835円)」、それから冷酒(玉の光)を一合いただきます。

○お造り:落葉を象った土の器で。よこわ、鯛、酢橘の上に海胆、という組み合わせが定着した様です。今回は鯛が少し柔らかめでしたが、肉厚でたっぷり盛られていたのが印象的でした。
○鱧の八幡巻:こちらの秋の一品。牛蒡を肉厚の鱧で巻いたものがほっこりとした煮物に。柚風味の小芋、小茄子、山菜、それに鯛の子まで添えられていました。
○だしまき:毎度変わらず美味しいです。
○漬物:茄子の浅漬けが主役、小角切りの大根の漬物はちょっと鰹の様な風味がして不思議な美味しさでした。山椒昆布も良いです。定番の細かく刻まれたしば漬、ごぼうの醤油漬、壬生菜も美味しいです。漬物でごはんを二杯、お茶漬けで一杯いただきました。
○ごはん、生麩の赤出しです。

毎度の様に楽しませていただきました。お腹いっぱい、もう入らない、と言いながら、もう少ししたら土瓶蒸しがいただけるよね、何時かはしゃぶしゃぶを食べたいね、という話が出来るのは何故でしょう。

【2012年1月】
お誘いいただき、特別のお節料理をいただける機会を得ました。内容だけ記します。

○なます:氷頭、大根、人参
○おせち:子持ち鮎煮、鱈昆布〆、干柿、いくら大根、黄身味噌漬もち花風、数の子、黒豆とちょろぎの松葉串、鰯の子まぶし、蟹巻き、このわた、山芋
○お造り:鯛、よこわ、赤貝、羽子板大根
○炊き合せ:鯛の子、大根、金時人参
○蕪蒸し:鱈、百合根、牡蠣、海老
○だし巻
○漬物、ごはん
【店舗データ】
丸太町十二段家 (まるたまちじゅうにだんや)
075-211-5884
11:30~14:30、17:00~20:00
定休日 水曜日
京都市中京区烏丸丸太町西入
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