よろめき食い道楽記

日々見つけたオイシいもんのことを語ります

十両 [聖護院]

十両とは控えめなことを!横綱または千両役者のお値打ち魚料理

【最新訪問:2012年1月】
ほぼ1年ぶりの訪問です。前回にちょっと疑問に感じた点が今回は完全に払拭され、こちらの最大(唯一)の特徴、驚異的なコストパフォーマンスが復活しておりました。「天然ひらまさ造り定食 1260円」「黒めばる煮魚と炊き合わせ定食 1365円」で値段はこれまでと変わらず、ちょっと濃いめながら味付け もきっちり美味しいです。真面目に営まれていることがわかりました。

*店の雰囲気など*
【2010年10月、初訪問:2008年1月】
寿司店でも割烹でもありません。仕出し屋、または街の定食堂です。
大変なボリュームのある、とてもお得感ある魚料理を提供しておられる隠れた名店だと思います。

熊野神社の西すぐに南北に通る小径は、食事ができるお店が意外にも多くならんでおります。その中で最も風格を感じるのがこちらの十両。通りの東側 にあって、よく見れば鉄筋ですが、入り口だけ一見すると古い木造風で大きな暖簾がかかっております。ここからは店内の雰囲気などがわかりにくいですが、実 は奥行きがずっとある大きなお店です。

入ってすぐ右手の調理場に声をかけ、「どうぞ〜」というご主人の声に励まされて進み、手前のスペースを通り 過ぎ、奥の広いところへ直進します。こちらには4人がけのテーブルが10卓以上あり、ちょっとした宴会とお一人様が同居するカオス空間、しかし「魚を食べ に来たぞ!」という気持ちが、不思議な一体感を成立させております。

好きな場所に着席出来ますが、その前にメニューを確認してください。その日、その時間に用意出来るメニューが、床置きのボードに並んでおります。 お造り、煮魚、焼魚、鍋まで。すべて定食ですが、単品も可能です。このボードが唯一&最新のメニュー情報で、店に入ってから一直線でこちらに向かうことが 出来るのが事情通と言えましょう。こちらが満席なら、入り口の方へ戻ってそちらのテーブルへ。とにかく最初にボードを見てください。決めてから着席し、女 将さんにオーダーします。飲み物が欲しい場合は、テーブルにあるメニューを見て注文です。

以下に具体的なメニュー等について記します。こちらの定食は、ごはん(秋はサツマイモ入り、冬はあずき入り、春はえんどう入りが多い)、はまぐりのすまし汁、それに自家製ちりめん山椒、お漬物がついております。メニューは、これにメインの皿が加わったものであることをご理解下さい。

*個別メニュー*
○天然 ひらまさのあら煮定食(1260円)
初めてこの店に訪問した時にオーダーしたものです。モノが運ばれて来た時には思わず笑ってしまいました。
まずメインのあら煮が乗っているお皿、直径が40センチ近くある薄緑の平皿です。普通、宴会用で7、8人分のお刺身を盛るためのモノです。何で一人分の煮魚に使う?という疑問と、喜びでよろめくこと絶大。で、ガツガツいただきました。
結 局、このお皿には、一辺12センチの三角状のカマが二個、7センチ角ぐらいのお頭のブツが二個、10センチ四方ぐらいの中骨三枚、それに血合い、中おち、 ヒレなど細かなところが多数。養殖ブリやハマチと違って適度の脂、ヒラマサ大好きです。これが豆腐、生麩と一緒に炊き合わされていました。付け合せに菊菜 とニンジンのおひたしです。
ごはんはおかわり自由です。普通なら不要ですが、ごはんが無くなっても、大量におかずが残ったのでおかわりしました。お隣で同じメニューに格闘していたご夫人は、持ち帰り用の折をお願いしていました。さもありなん、という感じです。うう、苦しい、でも美味しかった!感動の初回訪問でした。

○あこう煮魚と野菜炊き合わせ定食(1575円)
私の自慢話に耐えきれなくなったかみさんのリクエストがあり、二日後に二人で平日夜に再訪問しました。
私 は驚きませんでしたが、先日の大皿が再登場。かみさんが注文のあこうは、半身ながら皿から頭と尾の一部がはみ出すものがどーん!尾の先が上に曲がっている のが、鍋の壁に沿って曲がっていたのかもしれません。季節柄、紅葉麩と一緒に煮られていました。あら煮より抑えめの甘辛、上品な白身が美味しいです。
またもや笑ってしまうのが一緒に盛られた炊き合わせ。里芋ごろごろ、赤万願寺がでろーん、それに南瓜(かぼちゃ)がどん!多くの女性はこの辺りはノー・プロブレムの様ですね。

○天然 ひらまさお造り定食(1260円)
こちらのお造り、総量は煮魚に及ばないものの、そのボリュームはすごいです。
先日のあら煮の話 から、使われているひらまさの大きさ、背身と腹身それぞれの大きさが想像いただけると思います。それを厚めにきったお造りが12、3枚。大量のツマの上に 盛られております。さらに2枚ほど赤身(この日はビンチョウ)、中おちの山かけ少々、イクラがアクセントで付けられ、これで一人前。
かみさんに少しあげて、煮魚をたくさんいただきました。

○たいらぎ貝お造り定食(1365円)
お造りが食べたくなって一人で訪問。大きな貝柱で、甘くて美味しいものですがさてどうでしょうか。
直径が7、8センチ、高さが同じぐらいの円柱。それが4枚ぐらいにザックリスライスされています。またその円柱が3個分、大量のツマの上に鎮座されています。脇を2枚ほどのカンパチ、ビンチョウ中おちの山かけ、それにイクラが固めて万全。けっきょくごはんはおかわり。

○天然 かんぱちあら煮定食(1260円)
またもや魚が食べたいというリクエストで、夜にかみさんと再訪問しました。
かんぱちは、ひらまさよりかなり小さい様です。しかしあら煮の量は容赦ありません。おなじみ大皿に、今回も南瓜が同居しています。小骨を無言で取りつつ、こってり甘辛いお味を楽しみます。しかし脂の乗り具合などを考えると、ひらまさに軍配が上がるでしょうか。

○自家製 鰆西京味噌漬焼定食(1260円)
ボリューム系メニューをオーダーしたかみさんを対応するため、バラエティー重視のこちらを選択しました。
切り方も分厚いですが、元々の大きさもスゴそうな鰆が一切れ。脂がのり香ばしい、味噌のほんのりと甘い味も結構です。焼魚は盛り込みが楽しくて、このお店の隠れた人気メニュー大きなだし巻きが二切れ、里芋煮物や万願寺の焼ひたし等々。毎度のお値打ち感は嬉しいです。

シマアジお造り定食(1365円)
流通量が多い高級養殖魚の中では好きなシマアジです。期待通りたっぷり、ほぼ20切れ乗っておりました。加えて飾りのイクラ、まぐろ山かけが少し付いて申し分ありません。

○天然 活平目お造り定食(1680円)
冬 の高級魚の平目、さすがにこの値段ならほどほどの量だろうと思っていました。ところが平目では見たことも無い分厚さで切ったお刺身が十数切れ。味も歯ごたえもしっかり、独特の甘さをしっかりと堪能しました。お決まりのイクラ、マグロ山かけの他に、キビナゴ。青菜の煮付けも付いて贅沢な夜です。

○天然 ひらまさしゃぶしゃぶ定食(2500円)
これまでの事である程度予想はしていましたが、それを超える状況です。直径40センチほどの薄緑の平皿一面に大きなひらまさのスライスが華盛。さらに同じ大きさの皿に白菜や茸、豆腐などの具が盛られています。カセットコンロ上に用意された土鍋の大きさも、どう考えても一人分とは思えない量。肴を本当にレアと なるように仕上げ、柑橘の効いたポン酢にたっぷりの紅葉おろしでいただきました。ブリより脂分が少なく、さっぱりとコリコリの食感が美味。山葵とお醤油を お願いして、ヒラマサをお刺身で食べるのも嬉しい味の変化です。ポン酢などはシェアできる様に人数分用意してくれます。

ほたるいかお造り定食(1260円)
軽 くボイルされた旬のイカが20匹ほど、たっぷりの大根の上に並んでいます。ワタの風味もちゃんと残っていて、お味噌の甘味が勝った酢みそ、山葵醤油どちら でも美味しくいただきます。少しづつ付いていたマグロ山かけ、イクラ、特に釜あげの生しらすが驚きの品でした。二人でひらまさの鍋一人前とシェアすると、 味の変化もあって豪華な夕食となりました。特筆すべきはこの組み合わせで一人2000円未満。

○黒めばると京野菜の炊き合わせ定食(1365円)
やっ ぱり使われた大皿の上に、30センチ程のある黒めばるの甘い煮付けがどん!万願寺、聖護院蕪、筍、里芋、だし巻きがその脇を固めております。旨い煮魚と季 節の野菜がたっぷりいただけて、やはり上等な食事をいただいたという気分が心地よいです。こちらのお店の名物メニュー、さすがに頼まれる方が多い様です。

○かさごの唐揚げ定食(1890円)
か さご、関西ではガシラと呼ばれるとても美味しい魚です。20センチ近くの魚二匹が見事な丸揚げに、白身だけでなく、鰭などがカリカリと香ばしくスナックの 様にいただけます。付け合わせに万願寺や菜の煮付け、甘い白エビの唐揚げも春らしく大満足でした。一人ならちょっと気合いで食べた方が良いボリュームで す。

○赤めばる(小)と京野菜の炊き合わせ定食(1260円)
上記の黒めばるとほぼ同じ内容でしたが、当日のお魚のサイズが小さいとのことで105円お安くなりました。

○かわはぎ薄造り定食(1680円)
ちょっと時期外れ(6月)でしたが、大好きな「庶民の河豚」です。幸か不幸か、それほど薄くもないお刺身がお皿一面です。さらにたっぷりの肝!おろしポン酢でこってり楽しみました。少しのいくら、相変わらずたっぷりのツマが付いております。

こちらのポイントは圧倒的なコストパフォーマンス。どう考えても多いやろ、という量が、容赦なしに提供されます。この内容を目にした時、店のサービスに喜ぶ か、全て食べきれるか不安になるか。小食の方は、どうぞ大食いの方とご一緒に楽しまれてください。味付けもオーソドックスで、安心していただけます。裏通りにある穴場のお食事どころ、お勧めです。

【店舗データ】
十両(じゅうりょう)
075-771-1170
11:30~20:00
定休日 不定休
京都市左京区聖護院山王町42

レビュー(食べログ)